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インドとパキスタン 停戦で合意も維持されるか不安定な情勢 NHK NHK

領有権を争うカシミール地方で起きたテロ事件をめぐって、軍事行動の応酬が続いていたインドとパキスタンは、10日、互いに攻撃を即時停止し、停戦することで合意しました。しかし、境界線をはさみ両国の軍の部隊が依然にらみあいを続けていて、停戦合意が維持されるのか不安定な情勢です。

インドとパキスタンをめぐってはインド軍が今月7日、テロ事件への報復だとしてパキスタン側にミサイル攻撃を行ったことをきっかけに、双方が無人機やミサイルによる攻撃を行うなど、軍事行動の応酬が続いていました。

こうした中、アメリカのトランプ大統領は10日、SNSへの投稿で、双方が攻撃を即時停止し、停戦することで合意したと発表し、両国政府もそれぞれ停戦に合意したことを明らかにしました。

合意から一夜明け、インドのモディ首相は11日、シン国防相や軍のトップらと緊急の会議を開き、今後の対応などについて協議したとみられます。

一方、パキスタン外務省は、11日発表した声明で仲介役をはたしたアメリカに謝意を示したうえで、「地域の平和と安全、繁栄を促進するためにアメリカや国際社会と引き続き連携することを約束する」としています。

カシミール地方の境界線では、合意の発表直後には双方が、攻撃を受けたなどとして互いに合意違反があったと主張しあう場面もありましたが、11日はこれまでのところ目立った軍事行動は確認されていません。

ただ、境界線をはさんで両国の軍の部隊が依然、にらみ合いを続けていて、このまま双方が攻撃を自制し、停戦合意が維持されるのか、不安定な情勢です。

米有力紙“事態が急速に核戦争に発展する懸念があった”

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今回の停戦合意をめぐり、アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは10日、関係者の話としてトランプ政権が仲介に乗り出した背景について「事態が急速に核戦争に発展するという懸念があった」と伝えました。

それによりますと、アメリカ側の最も深刻な懸念材料となったのは、パキスタンの首都イスラマバード近郊のラワルピンディにある空軍基地が現地時間の10日未明インドからミサイル攻撃を受けたことだとしています。

この基地はパキスタン空軍にとって重要な拠点であるだけでなく、パキスタンが保有する核兵器の管理を担う司令部にも近いということで、パキスタン側はインドが核兵器の無力化をねらったと受け止めた可能性があると指摘しています。

また、アメリカのCNNテレビもトランプ政権当局者の話として「両国の紛争がエスカレートしかねないという憂慮すべき情報」を入手したため、国務省は仲介に乗り出さざるをえないと判断したと伝えています。

パキスタン各地の空港で150便以上が欠航

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インドとパキスタンの停戦合意を受けて、パキスタン各地の空港では業務が再開されましたが、航空会社の中には安全上の理由などから運航の停止を続けるところも少なくなく、11日は国内線と国際線のあわせて150便以上が欠航となりました。

パキスタンの航空当局によりますと、欠航となったのは首都イスラマバードや南部のカラチ、それに東部のラホールと、中東各国などとを結ぶ国際線のほか国内線にも欠航がでているということです。

影響を受けた便のなかには、中東のサウジアラビアでイスラム教徒が聖地メッカを一斉に訪れる大巡礼の「ハッジ」に向けて出発する人も多くいたとしています。

航空当局の関係者はNHKの取材に対し「カシミール地方の境界線付近ではインドとパキスタンが依然、対立した状態が続き、停戦の合意が守られるのか不安定な状況にあることが運航に影響しているのではないか」と述べ、12日以降も欠航する便が続くという見通しを示しました。

専門家 “双方の利害が一致か”

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インドとパキスタンが停戦することで合意したことについて、防衛大学校の伊藤融教授は「インドとしては、テロに対して報復したという姿を国民に示すことができた。他方でパキスタン側は、経済が危機的な状況になっている中で、戦闘が長期化することは何としても避けたかったというのが政権の本音だろう」と述べ、双方の利害が一致したことが、停戦合意に至った背景にあると指摘しました。

また、停戦交渉がアメリカの仲介で進んだとみられることについては「アメリカ以外にもイランのアラグチ外相が両国を訪問していたほか、中国も仲介に積極的に関わる意欲を示していた。アメリカとしては成果を持って行かれたくない思惑があった」と述べ、インドとパキスタンが戦闘停止を求めているとみて、アメリカが外交的な成果を急いだものとみられるとの見方を示しました。

一方で「停戦合意はあくまでも戦闘の停止で、インドはパキスタンに対する外交的な制裁措置などを解除するつもりは今のところない。パキスタンから仕掛けられるテロ攻撃が、停戦合意が壊れる要因としてもっとも可能性が高いだろう」と述べ、双方が攻撃を自制して停戦合意が続いていくのか、状況を注視する必要があると指摘しています。