最終更新日時: 2025年08月25日 12:57
期待値E[X]は確率変数の平均値を表し、分散Var(X)はそのばらつきを表します。
分散の定義:
Var(X)=E[(X−E[X])2]=E[X2]−(E[X])2
物理学では期待値を⟨X⟩と表記することが多く、これはE[X]と同じ意味です。
ランダムウォークで平均二乗変位(Mean Squared Displacement, MSD)、E[ΔXt2]が時間に比例する理由は、各ステップの移動が独立しており、分散が時間ごとに積み重なっていくためです。以下に詳細を説明します。
- ランダムウォークしたtステップ後の位置はXtとする
- ランダムウォークする点が最初は原点にいてX0=0とする
- ステップ毎にΔxだけ確率pで右に移動する
- 1次元ランダムウォークでは、時間 t における位置 Xt は次のように表現できる。
Xt==X0+i=1∑tΔXii=1∑tΔXi
ここで:
- ΔXi は i-番目のステップでの移動量。
- 確率 p で +Δx
- 確率 1−p で −Δx
- ただし左右に同じ確率で移動するならp=21
- 各 ΔXi は独立かつ同一の確率分布に従う。
- E[ΔXi]=0 (なぜなら、左右に同確率で移動するので)
位置Xtの期待値を計算する
E[Xt]===E[i=1∑tΔXi]E[ΔX0+ΔX1+ΔX2+...]0
二乗期待値の計算を試みる。(2)を使って、二乗を式展開すると、
E[Xt2]==E(i=1∑tΔXi)2E[i=1∑t(ΔXi)2+2i<j∑ΔXiΔXj]
各 ΔXi は独立しているため、異なる i=j については、
E[ΔXiΔXj]=E[ΔXi]⋅E[ΔXj]
E[ΔXi]=0 より、交差項 2∑i<jΔXiΔXj は消える。
残りは各ステップの二乗の和のみが残り、
E[Xt2]=i=1∑tE[(ΔXi)2]
以上より位置の二乗の期待値は、各ステップの変異量の二乗の期待値の合算値であることが分かった。
次に、E[(ΔXi)2]を求める
E[(ΔXt)2]の算出をするために、ΔXi の確率分布を考える。
ΔXi={+Δx−Δx確率 p,確率 1−p
その二乗期待値は:
E[(ΔXi)2]===(+Δx)2⋅p+(−Δx)2⋅(1−p)(Δx)2⋅p+(Δx)2−p⋅(Δx)2(Δx)2
上記より、
E[Xt2]===i=1∑tE[(ΔXi)2]i=1∑t(Δx)2t⋅(Δx)2
変異量の分散は二乗平均から平均の二乗の差であるため、変位ΔXtの分散を計算してみる。
Var[ΔXt]=E[(ΔXt)2]−(E[ΔXt])2
任意のステップtでの変異量は平均値として0なので、E[ΔXt]=0 のため、
Var[ΔXt]==E[(ΔXt)2](Δx)2
Var[Xt]=E[Xt2]−(E[Xt])2=t⋅(Δx)2−0=t⋅(Δx)2
各ステップの分散が独立しているため、時間 t にわたる分散は次のように加算されます:
E[Xt2]=t⋅Var[ΔXi]=t⋅(Δx)2
最終的に:
E[Xt2]=t⋅(Δx)2
この結果から、平均二乗変位が時間 t に比例することが示されます。
ランダムウォークで平均二乗変位が時間に比例する理由は、
- 各ステップの移動が独立している。
- 分散がステップごとに積み重なる。
- 各ステップの二乗期待値が分散と等しい。
これにより、時間に比例して広がりが大きくなる特性が得られます。